「…何の事?」
俺と目を合わせることはせずに、燈真はしれっとした顔でカクテルを注ぎ続ける。
「お前、自分が何したのかわかってんの?」
苛立ちを隠すことなく問うと。
「んー?なんだっけなぁ。最近物忘れがひどくって…」
「っふざけんじゃねぇよ!」
我慢できずに、カウンターの上にあった瓶を一本手にとって、他の瓶を全部薙ぎ払った。
硝子同士がぶつかりあって、激しく割れる音が鳴り響く。
同時に、何人かの悲鳴もフロアに響いた。
中の液体がカウンターの上に散らばり、床に滴る。
燈真の注いでいたグラスに当たるように倒した瓶が、当然のようにそれをかち割った。
「ひえっ」
目の前に居た客も、慌てて飛び退いて、遠巻きに見ている人々に加わる。
それでも、微動だにしなかった燈真は、注いでいたシェイカーを元の位置に戻し。
「あの、馬鹿女の為に、そんなに怒れちゃうわけ。かっこ悪。」
やっと、俺を見た時には、笑んでいた。


