詐欺師の恋


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「あれー、零、帰ってきたの?」




ルナの受付が、俺を見るなり驚いたような声を上げた。




「しかも、この時間に正面から、とか、珍し…」




完全に無視する俺に、異変を感じたのか、黙り込んで道を譲る。




「あっ、零だ…」





それに準ずるように、クラブに残っている客たちも同じような反応を示し、一斉にぞろぞろと道を空けていく。



まだ、賑やかな曲が流れる中。



カウンターに着くと、いつもと変わらない風景が、そこにある。




「おっ、零じゃん!どうだった?歩道橋…」






珍しく隅に座っていた崇も、俺の顔を見て、直ぐに口を噤んだ。






「あっ、きゃぁ!お帰りー!ちょっと聞いてよ、私…」





ガシャーーーーーン!!!




「きゃああっ!!!」





傍にあった空のスツールを蹴飛ばすと、駆け寄ろうとしていた葉月が悲鳴を上げる。





悪いけど。




そんなの、俺の目には映っていない。



俺の視線の先には。





「どーいうことだよっ!?」




途中から、姿を消した筈の男。



なのに今、涼しい顔してグラスにカクテルを注ぐ、燈真の姿があった。