詐欺師の恋


だから。




「目の前で、あんたが、、居なくなると思ったら…それだけで息が止まるかと思った。」







そんな風に捜すことすらも、叶わなくなるのかと。


想う事も、出来なくなるのかって。







「はぁ…ほんと、、良かった…」






ここにきて、俺はやっと、安堵の溜め息を吐いた。




飽きる事無く、また記憶を更新し、焼き付けるために、彼女を見つめて。




そして、いつかのように、その頬に触れようかと手を伸ばし。





「!」





はっと息を呑んで、俺は伸ばしかけた手を引っ込めた。




ピクリ、と彼女の瞼が動いたのに気付いたからだ。








「…さよなら。」







最後に、聞こえないくらい微かな声を置いて。




音をたてないように、腰を上げ、静かに病室を出て行く。






目を覚ますまで、居てあげたかったけど。



最初から、そんなつもりはない。




もうすぐ意識が戻る。



花音が現在(ここ)に居る。



それさえ、わかれば、俺はもういい。










「―行くか。」







外に出た瞬間、花音に向けていた柔らかな眼差しを仕舞い。



代わりにきつく空を睨んだ。