詐欺師の恋

とりあえず今日は、と、個室に移された花音。



そろそろ夜明け、の時間。





誰も居なくなった病室で、俺は椅子に腰掛けて、その寝顔をじっと見つめた。




出逢ったばかりの頃は。



彼女に触れることは、簡単な事だった。


他の女と同じように、同等の価値で、同じ立ち位置で。




だけど。



手放したくないと思ってからは、触れるのが怖くなった。





大事過ぎて。


大切にしたくて。




いつか、居なくなってしまうから。



いつか、離れなくてはいけないから。




傷つけたく、なくて。






「…、ごめん。。」




結局は、傷つける羽目になった。



こんなに、なるまで。





いつも、謝るのは、眠っている時だけ。


どうせ、届かないと分かっていながら、俺は本当に狡い男だ。





やっぱり、俺はあんたに触れる価値なんか、ないんだよ。





あんたと離れてから。




あんた以外の誰かに触ることも、出来なくなるなんて。



俺自身、予想もしてなかったよ。