「終わりましたよ。」
どれくらい時間が過ぎたのか。
俺は呼ばれて。
ベットに寝かされている花音の傍に行った。
病室、ではなくて、処置室、みたいな部屋に、ぽつんと置かれた簡易ベットに、花音は眠っていて。
頭や身体に、包帯がぐるぐると巻かれて、傷だらけで、痛々しかった。
「額の傷も大したことなかったですし、あとは意識が回復するのを待って、詳しい検査は明日以降になります。ただ、身体はあちこち打ってるし、腰骨は見事に折れているので、暫く入院ですね。」
「…目、覚ますんですか。」
「え?」
淡々とした医者の口調も、横に立つ看護師の様子も、切迫した雰囲気はないし、説明内容も大事には至らないと言っているようだった。
けど、俺は、そのことだけがひっかかっていて。
目を、覚まさなかったら、どうしよう。
二度と、彼女の目が、開かなかったら?
もう一度、花音が世界を見るという保証の言葉が聞きたくて。
「意識、戻るんですか…?」
穏やかな顔をして眠る、花音の表情に視線を落としながら、もう一度、質問を口にする。
「…恐らく落ちる瞬間で気を失ったんだと思いますから…そろそろ、目を覚ますんじゃないですか。」
医者が安心させるように頷いて。
目を覚ますまで、傍に居てあげてください、と。
傍らで看護師がにこりと微笑んだ。


