詐欺師の恋


コーヒー自体が余り好きじゃない私は、来客用にインスタントしか置いてない。




椅子に座って待つ中堀さんに背を向けつつ、私はその粉をざくざくとカップに入れた。




思い切り苦くしてやるんだから。




別段、中堀さんに何をされたわけじゃないけど、とってもないがしろにされた気分の私は、気付かれないようにほくそ笑む。



どうせ、中堀さんは自分と同じでにがーいのが好きな筈だから、同類だし気付かない筈!




沸いたケトルから勢い良くお湯を注ぎ、スプーンでかき回す。



うん。黒いね。真っ黒。



いいじゃない。



自分のお気に入りの丸みを帯びたカップには、ティーバッグを入れた。





「あ。」





お湯を注ごうとすると、中堀さんが気付いたように声を出したので振り向いて首を傾げた。




「どうしたんですか?」




バレるわけないと思いつつ、内心バレたか?!と冷や冷やしていると、中堀さんが人差し指で何かを差している。




「それ、先にお湯いれた方がいい」




「?」





どうやら、私の持っているカップのことらしい。




「これ、ですか?」




「そう。ティーバッグ入れてから勢い良くお湯を注ぐと、苦味が出るから、後入れの方がいいと思うよ。」





「あ、はい。そうします。」






一応頷いて、私は再びキッチンに向き直る。





………


えっと。




良心が、痛みます。