詐欺師の恋

そんな私と違って、『彼女』は、気持ちに区切りをつけるために、全て消して、無かったことにして。

沢山泣いたら、家に帰るために。




「俺は、、あんたが来るのがもう少し早かったら良かったって思ってたけど。ミサキちゃんにはあんたの声が、ちゃんと届いてたんだね。」




タカがそう言ったのと同時に、藤代くんの真っ赤だった目から、涙が零れた。




「っつ…」




それを隠すように、咄嗟に藤代くんが自分の手で口を覆った。





人間にとって。



自分が死ぬよりも、辛いことは。


自分の大事な人を、失うことで。





誰かを責めたくて。

誰も責められなくて。



結局、自分を責める。



あの時、何かできていたら。


もう少し、傍に居れば。



結末は変わっていたんじゃないかと。


期待するから。




そして、その罪悪感から。



逃れようと必死にもがいて。



また、誰かを傷つけてしまう。






「そんなわけで、悪いけど、燈真の所にカノンちゃんは渡さないから。行こう、カノンちゃん。」




タカがそんな藤代くんから、あえて目を外し、私に促した。


私も小さく応じて、藤代くんに背を向ける。






「櫻田っ!!」





少し歩いた所で、後ろから声がかかり、立ち止まる。





「櫻田を、、好きだったことは…嘘じゃ、ないから」






振り向く事無く、聞いた藤代くんの声は、微かだけれど、震えていた。






「信じてもらえないかも知れないけど…今でも、想ってる。」