詐欺師の恋

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世間でいう、いわゆる仕事納めの日。



ほとんどの企業がそうなので、当然飲みに行く人間も多い。




そんなわけで、日にちが変わっても、ルナは多くの客で賑わっていた。



崇も所用らしく、葉月も居ない、珍しく個人的には静かな夜だった。






「?」






満席のカウンターに、注文された酒を全て並べ終わった頃、その客達の背後で、スタッフが一人、必死に俺にアイコンタクトを送っているのに気付く。



首を傾げて、そっとカウンターを抜け、






「どうした?」




と訊ねると、最近入ったスタッフの若い男は、困ったような顔をして俺に耳打ちした。





「…それが、トシヤさんが、、黒が来てるって燈真さんに伝えてくれって。。。。」






トシヤとは、受付兼用心棒として働いている男の事だ。




「黒?んなもん追い返せばいいだろ。」




自然と眉間に皺が寄った。




ルナでは、クラブ内で由々しい問題を起こしたり、クラブ側に都合の悪い人間は、ブラックリストに載せて、入場自体を拒否している。



客の耳に入ると面倒なので、スタッフ内では『黒』と呼ぶようにしていた。



そして、そういう人間は、容赦なく追い返して良いことになっているのだ。