裏口から外に出ると、生温い風がそよぐ。
「相変わらずあいつは馬鹿だねぇ。」
先程の妹の顔を思い浮かべながら、一人言ちた。
空生は戻ってきたというよりも、繋がれたという方が正しい。
決して自分の意思で戻ってきたわけじゃなくて、見えない鳥籠に囚われただけのこと。
空生が本当は何を望んでいるか考えているのなら、戻ってきて喜ぶなんてことはできない筈だ。
崇のように。
「あれは阿呆だな。」
呟くと、少しの苦さが込み上げた。
つくづく人間ていうのは、馬鹿ばっかりだと思う。
それぞれ、全く別の生き物なのに、様々な事で、自分を鎖に繋ぐ。
そして、それらはよく交わって、反発したり、砕いたり、傷つけ合ったりする。
そうして、自滅することもしばしば。
なのに、どうしてか横一列に並びたがる。
飛び出した者を排除したがる。
愚かで不完全で救いようがない。
「ま、俺はそれを利用するんだけどねぇ。」
待ち合わせ場所へと足を運びながら、年の瀬の記憶をなんともなしに回想した。