詐欺師の恋

========================








「うわ、とと…」





会社を出て直ぐに、春風が強めに駆け抜けたせいで、私の首に巻いていたストールが解かれる。




必死で掴もうとしたが、結局飛ばされ、街路樹の幹に引っかかった。






「あー、ツイてない」




走る気はとっくにないので、私は溜め息と共にとぼとぼと街路樹まで歩く。




「?」




そこへスーツの足が登場し、かがんだかと思うと、ストールを拾った。




「あ…」




誰かと思い、視線を上にあげると、飯山が立ってこちらを見ていた。




ぞくりと鳥肌が立ったのを感じる。




「コンバンワ。中堀とは相変わらず上手く行ってんの?それとも藤代に完璧に乗り換えた?」




飯山は手にしたストールを手首に巻きつけ、にやにやと笑った。



その向こうには、おぼろ月が光を放っている。