「…良いと思うよ。月並みな言葉だけど、もっと良い人が見つかるかもしれないし。」
憲子はいただきます、と呟き、鶏唐にかかるソースを箸で広げた。
今は敢えて、顔を合わせない。
憲子のそんな優しさは、ちゃんと私に伝わる。
「…うん、ありがと。」
でも、その言葉を受け容れることは、心が拒否してしまう。
―あんなに好きな人には、きっともう二度と逢えない。
それは、私の中で確信に近い程強く感じている。
あの人が帰ってきてくれるなら、何年でも待っていられると思う。
だけど、もう。
どんなに待ったって、あの人はここには来ない。
そして、自分も。
いつか、王子様が迎えに来てくれるなんて、夢を見られる程。
子供じゃなくなってしまった。
現実が、いつも不条理の上に成り立っていることなんて、とっくに気付いている。
自分の思い通りに運ぶことなんて、滅多にない。
ましてや、他人(ヒト)の心となれば、尚更だ。


