藤代くんの気持ちを、振り回すことはしたくなかった。
だから、婚約者を演じてくれ、なんて、冗談でも言えなかったし、実家からそういう話が来ていることも、伝えていない。
「お見合い、かぁ…」
憲子が箸を取ったのを見て、私もそれに倣う。
時間はとっくに、中堀さんと一緒に居た短い期間を追い越して、一緒に居なかった時間の方が多くなってしまった。
時の流れが、駄々をこねる子供の心を萎えさせるのと同じように。
私の中でも、手に入らないどころか、何処にいるのかもわからない人に焦がれる想いを、封印しなければならないという感情が半分位動き始めていた。
あとの半分は、自棄になっていた。
もう、どうにでもなれ、的な。
「どうせ、、誕生日に行って来いって言われてるから…おばあちゃんの所、行ってこようかな。」
どうせ、好きな人と一緒になれないんだったら、なんでもいいか、と。


