「それは残念だったな。もう少し残って見ていれば良かった。」
「…もう何も言えねぇ。」
しれっと言い放つ空生に、俺は白目を剥いた。
「清算は済んだの?」
突っ伏した俺を余所に、燈真が静かな口調で空生に訊ねる。
「…まぁ、いつも通り。大丈夫だよ。」
これまた同じような口調で、空生が答えた。
暫く三人で酒を飲み交わした後、空生は裏口からクラブを出て行く。
ピークは過ぎたとは言え、クラブに人がいない訳じゃない為、燈真は接客に戻る。
いつもは俺も、カウンターでさよならするんだけど。
この時は、空生を見送る為に、珍しく一緒に外まで出た。
「じゃ、元気でな。」
一歩先で振り返る空生に俺が声を掛けると。
「…崇から普通の言葉を聞くと、ぞっとするね。」
「意味がわかんねぇよ。お前にとって俺って何なんだよ。」
空生が怪訝な顔をして、俺を見る。
「…何か訊きたいことでもあるんじゃないの。」
空生の目はいつだって静かで。
感情の動きがない。
だから、何を考えているのかわからない。
今、俺に、何を感じたのかも。


