「んだよ、折角楽しくなってきたのによぉ。もういっそのことずっとここに居ろよ。」
茶化すように、別れを惜しむと、空生は冷めた目で俺を見る。
「いや、崇とはほとんど接触してないし。楽しい思い出もないし。」
「あー、お前はマジでひでぇ奴だよ。」
チッと舌打ちして、隣に座った空生のグラスにジンを注いでやった。
「それより、崇が熱だした時に色々買い物頼まれたのが腹立たしかったっていう思い出は出来たな。」
液体が注がれていく様子に目をやりながら、迷惑そうに空生が言う。
「もう一回言うが、本当にお前はひでぇ奴だよ。袋ごと俺の顔面めがけて投げつけやがって。あん時、栄養ドリンクの箱の角が顎にヒットしてめちゃくちゃ痛かったんだぜ。」
空生がこっちに来てから暫くして、風邪をひいて寝込んだことがあった。
その時に空生にヘルプを出し、留守電に憐れな俺の声を吹き込んだのに、まさかの返事なしだった。
燈真や葉月にも同じような連絡をしたけど、あいつらも薄情な奴等で、完璧無視だった。
そんなんで、もう俺は死ぬんだと思い始めた頃、インタホーンの音がして、機嫌が非常に悪い空生が、玄関口に立っていた。
その直後の記憶が甦ってきて、俺は無意識に顎を擦(さす)る。


