詐欺師の恋


















「お疲れ」



ライブが終わって、カウンターにやってきた空生に声を掛けた。



相変わらずの人気者で、あちこちから声を掛けられては無愛想に会釈したり、言葉を交わしたりしながら、やっと辿り着いた頃にはげんなりした顔をしていた。



いつも無表情なのが、更に無表情になる。



これは、俺が長年の付き合いでわかるようになったもんだから、他の人が見たって、わからないくらいの違いだけれど。




「一人で飲んでるの?珍しいね。ギムレット頂戴。」




言いながら、空生は俺の隣に腰を落ち着ける。




ミサキは、とっくに兄貴に連れられて帰ってしまったが、去り際に『つまんないところ見せちゃってごめんない』とこっそり耳打ちしていった。




「いや、さっきまで、かわいいミサキちゃんが居ましたよ?」



不憫なあの子の名前を出してみても。




「誰だよ。」



馬鹿にしたように、けっと笑う、空生。