詐欺師の恋

にやにやと笑う俺を不愉快そうに兄貴は見るけど、言葉は発しない。




「零狙い、みたいだけど…不毛だし。」




これは本当だからね。




「あんだけ真っ直ぐだと…零は相手にしないから、ね。けど…」




だから、早く助けてあげなよ。


もう、ここに来ないようにしてあげなよ。



元の大学生に、戻して、青春を謳歌させてあげなよ。




でも。




いつも通りの、真っ直ぐに伸びたミサキの背筋に、俺は目をやった。






「ちょっと迎えに来るの、遅すぎたかもよ?」





あれから、時間が過ぎすぎた。





「-え?」




とうとう、兄貴は口を開く。


どういう意味だとでもいいたげな口調で。



俺は笑みを湛えたまま、そんな兄貴をゆっくりと見上げた。





「引き返すことができないくらい、溺れてる。」




そんなこと、他人の俺から見たって、わかるくらいなんだから、あんたはかなり鈍いよ?