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ミサキが常連になって、数ヶ月した頃。
「お、ギリじゃん、珍しいねー」
息を切らして入ってきたミサキに声を掛けるが、彼女は俺のことなんか目に映ってない位焦っているらしく、無言で定位置に腰掛けた。
そして、じっと待つ。
零の時間。
いつも通り、黄色い声が上がり、零が登場すると、ライトがキラキラと会場を照らす。
曲に合わせて身体を揺らす観客とは別に。
ミサキはひとり、じっと空生を見つめていた。
いつだったか、演奏を終わらせ、ステージを下りた空生にミサキが、一度礼を言った事があった。
けど、空生には何のことだかさっぱり。
そりゃそうだ。
自分は助けたつもりなんかなかったし、ミサキのことだって多分目に入ってなかったに違いない。
よって、無視。
それ以来、ミサキは空生に話しかけていない。
なのに、こうしてまだ追いかけている。
不毛だ。
なんで、あんな男が良いのか、俺には理解できない。
「ねぇねぇ、今日はなんで遅かったのー?」
一途過ぎるミサキを少しからかいたくなって、肩を抱いても、ミサキは鬱陶しそうに俺の手を振り払う。


