詐欺師の恋


========================

ミサキが常連になって、数ヶ月した頃。




「お、ギリじゃん、珍しいねー」





息を切らして入ってきたミサキに声を掛けるが、彼女は俺のことなんか目に映ってない位焦っているらしく、無言で定位置に腰掛けた。



そして、じっと待つ。



零の時間。



いつも通り、黄色い声が上がり、零が登場すると、ライトがキラキラと会場を照らす。




曲に合わせて身体を揺らす観客とは別に。



ミサキはひとり、じっと空生を見つめていた。



いつだったか、演奏を終わらせ、ステージを下りた空生にミサキが、一度礼を言った事があった。



けど、空生には何のことだかさっぱり。



そりゃそうだ。


自分は助けたつもりなんかなかったし、ミサキのことだって多分目に入ってなかったに違いない。




よって、無視。



それ以来、ミサキは空生に話しかけていない。


なのに、こうしてまだ追いかけている。


不毛だ。


なんで、あんな男が良いのか、俺には理解できない。




「ねぇねぇ、今日はなんで遅かったのー?」




一途過ぎるミサキを少しからかいたくなって、肩を抱いても、ミサキは鬱陶しそうに俺の手を振り払う。