「久しぶりじゃん」
いつかの歩道橋の上で。
いつかのように煙草を咥え、ぼんやりと手摺に寄りかかる空生に、後ろから声を掛けた。
「…なんだ、崇か。」
空生は、俺を一瞥して直ぐに目を逸らす。
「おう、なんだとはなんだ!?連絡も寄越さない薄情な奴め!」
「ってぇ」
すかした背中に蹴りを入れると、空生が振り返って、不愉快そうに顔を歪ませる。
「人気ある癖に気紛れだから、燈真も他のスタッフも困ってたぜ。」
「…今日はちゃんとするよ。」
「今日はって…もうすぐ今日じゃなくなるけどねぇ。」
俺の言葉に、空生は溜め息を吐いて、腕時計に目をやった。
「お前、ファン多いから仕方ねぇよ。集客率がちげぇもん。」
渋々という表情で、煙草の火を消して歩き出す空生の隣に並び、俺も歩く。
「だって俺、まだ帰ってきたばっかなんだけど。少しはゆっくりしたい。」
タンタン、と階段を下りる度にする聞き慣れた音が、やけに懐かしく感じる。


