詐欺師の恋


そんなことをまだ全然予期していなかった俺は、この時の会話の終わりに、空生の髪の色を褒めた。





「お前の髪ってどうやって染めてんの?良い色だよな。ま、俺はこの赤が気に入ってるから、金には興味ないけどな!」




名前を中々言い出さない空生から、半ば無理矢理聞き出した直後だったと記憶している。



空生の髪の色のことなんて、調べていなかった俺は、純粋に染めてるのだとばかり思っていた。




あんなキレイに染まる染め方があるなら知りたいし、美容師のダチに伝授してやろうかとまで考えていた。



だから。



空生の反応は、予想外で驚いた。




「…俺は、光を通さないくらい、黒ければ良いのにって思うよ。」




薄く焼けた朝の空を、忌々しげに睨みつけながら言ったあの時の空生の顔は、今でも鮮明に覚えてる。





アオは忘れちまったかもしんねぇけど。



カノンちゃんのことを話した時。



振り返って、『諦めんのは慣れてる』と俺を安心させるために言ったあの時と。




同じくらい、切なくて、苦しそうで、今にも泣き出しそうな。






そんな顔、してたんだぜ。