詐欺師の恋


着けた後に、チラリと様子を窺うが、男はもうこっちを見ていない。



「ん。」



俺は横に並び、同じように道路を眺めながら、ジッポーを持った片手だけを隣に差し出す。



それを隣の男は無言で受け取った。



俺も手摺に寄りかかり、煙をふかす。




暫くは、渋滞する車のエンジン音と時折鳴るクラクションだけがずっと流れていた。




「…あんた、誰。」




ふいにされた問いに、道路から隣に視線を移すと、男の目だけが俺を捉えていた。




「誰って―」




通りすがりの、と答えようとするが。




「こないだ、クラブにも、居たね?」




気付いていたのかと、内心驚いた。


あの一度きり、しかも、ものの数分しか同じ場所には居なかったというのに。



口を噤んだ俺に、畳み掛けるように男は続ける。




「火、貸して、とか、下手過ぎ。」




気のせいかと思う位に、目が微かに細められた気がした。




―笑った…のか?それとも、怒ってんのか?




まじで、わかりにくすぎるぜ、コイツ。




戸惑う思いに反して、俺の口角は吊り上がる。



確かにさっきの近づき方は、わざとらし過ぎたなと。


大根役者かっての。



でも、他に思いつかなかったんだから、仕方ないのだけれど。