詐欺師の恋

無言を了承ととったトキコが隣に腰掛けると、燈真の話の通り、男は立ち上がった。





薄らと、不愉快そうな顔をして、一度手にしたグラスをカウンターに置く。



それを見て、トキコが「あ」と焦った声を上げる。



「ちょっと!お願い、行かないで。」



後から考えてみれば、トキコは俺の手前、大人しく引き下がることができなかったのかもしれない。


はたまた、恋焦がれた相手だから、初対面で即撃沈なんてプライドが許さなかったのかもしれない。



どちらにせよ、トキコは選択を誤った。




やや媚びるように、男のシャツの裾を引いたのだ。





その瞬間、だった。




パシャッ



「きゃぁっ!?」




男が再び手にしたらしいグラスはトキコに向けられ、空になっていた。




「汚ねぇ手で触んじゃねーよ。」




男は鬱陶しそうにトキコに視線をやると、静かにグラスをカウンターに置き、踵を返し、クラブを出て行く。


それを、遠巻きにして見ていた女達も、唖然とした表情で見送った。




「大丈夫?」



燈真が慌ててタオルをトキコに手渡しているが。





数名の男達が金髪男の後を追っていったのを見ていた俺は、構わず席を立った。