詐欺師の恋

灰皿に煙草をトントンと叩きつけ、ぼんやりと酒を待つ男。



周囲には、トキコみたいに話しかけようか話しかけまいか、躊躇っている連中が遠巻きに彼を見つめている。


更にその様子を面白くなさそうに見ている野郎共も何人か。


大方ナンパして断られた女が、別の男に夢中だったっていう所だろう。



だが、当事者の男は、そのどれも、気にしてはいないみたいだし、気付いてもいそうにない。



今だって燈真が持ってきたグラスをおもむろに掴み―





「…あのぉ…」




そこで、一瞬俺の思考は止まった。



何故なら、観察していた男の傍に立った女が。




「隣…良いですか?」




他ならぬ、トキコだったからだ。




―迷ってた割に、チャレンジャーだな。




俺は首を傾げながらも、内心、トキコの行く末を見てやろうとほくそ笑む。




あの男はどんな反応をしてくれるのだろう。





ちらっと燈真に視線を送ると、二人を見ていないフリをしながら見ていて、面白がっているのが伝わる。