詐欺師の恋

「…あれにはそれなりに意味があってね。」



メリッサの碧の瞳が真っ直ぐに私を見つめた。




「零って女のファン、多いでしょう?だけど、本人は苦手なわけ。その上、超がつく気分屋でしょ?」




メリッサの言葉に、私は思わずうんうんと頷く。





「そこで」




ぴんと立てられた人差し指。




「もう、面倒!話しかけないで欲しい!!って思う時には、決まって、あの手を使ったの。」





「―え?」



あの手って、何?



メリッサが何を言わんとしているのか分からず、私は首を傾げた。




「あー、もう、カノンは鈍だわね!いい?ライブが終わった後、客の真っ只中で、誰か一人に声を掛ける、とか、カノンにしたみたいに、抱き締める、とかするわけ!そしたら、ある意味で虫除けになるのよ!」





苛々したように早口で捲し立てるメリッサに、目が回りそうな私。





「でもその気紛れで―、ファンの恨みを買ったりもするの。性質(タチ)が悪いことに、そういうのは本人には向かずに、選ばれちゃった子に行くから、こっちは毎回フォローに大変なのよ。それで、帰ってきて早々、やってくれたわね、って意味でああ言ったの。」





そこまで説明されて、漸く理解できてきた。



慣れたような動作で屋上に連れて行かれたのも、そういう事があってのことだったのだろう。



「―じゃあ、私の時も、それと同じだったんですね。」






ただの、虫除け?



面倒だったから、なのかな。




止まりかけた涙が、またじわじわとあふれ出しそうになる。





「…そんなこと言ってないでしょ??鈍い癖に最後まで聞かずに決めつけないでよ」





わかってないなぁ!もう!とメリッサが首を振る。