詐欺師の恋

「…この時間って、いつもクラブに居るんですか?」




ドリッパーを仕掛けるメリッサに訊ねると、彼女は顔を上げてこちらを見た。




「ううん、今日はたまたま。でも、カノンに会えて良かったわ。ずっと会いたいと思ってたから。カノンは?どうして来たの?」





「その…なんとなく…」





「なんとなく???私に会いに来てくれたのかと思ったわ。」





メリッサは茶化すようにそう言って、再び視線を落とすと、じっくりと真剣な目つきでお湯を注ぐ。




「ねぇ、一個、訊いてもいい?」





メリッサは、ふかふかと膨らんでいるコーヒー豆を見つめたまま呟く。


湯気が、ぷかりと空気に溶け込んだ。



「零、どうしてる?」




たった一言なのに。

一瞬で胸を鷲掴みされたような感覚に陥った。



「どう、してるって…」



私より、メリッサの方がよく知っているでしょ、と言いたいのに、声が出ない。



嫌な、予感がする。


私の動揺など、気づくはずもなく、メリッサは続ける。



「私に挨拶もなく突然、いなくなるから。元気にしてるかなって。」