「馬鹿だ、私…」



……言ってくれたのに。




「っうっ…」






とっくに全身は冷え切っているけれど、子供みたいに、涙が止まらず、顔を手で覆った。









―『俺…あんたのことが、好きなのかもしれない。』









好き、じゃなくて。



かもしれないって。








―『空生が詐欺師じゃない時にした恋は、後にも先にもカノンちゃんだけだよ。』









―『他人を身に着けてない時だけ、空生は、空生だった筈なのに。』








空生、って、呼んで良いって、言ってくれたのに。







零でも、他の誰でもなかった貴方を。





どうして、あの時のあの言葉と彼を。






私は信じてあげなかったんだろう。








貴方を、もう、一人にしないと。





傍に居ると言ったのは、私なのに。





貴方の傍を先に離れてしまったのは。





約束を破ったのは。





嘘を、吐いたのは。




私の方、だったのに。




空生で居る貴方は、いつも、本当だったのに。