詐欺師の恋

いつもおどけているタカとは違い、表情には陰りがある。



背景は、見慣れたものになっていて、あと少しで、家に着くのだと気付いた。




「知るわけないよね。俺だって最近初めて知ったんだから。」




タカは私を見ながら嘲るような笑みを浮かべた。




私の目に浮かんだ涙は溜まったまま、ぴたりと止まり、タカが次に何を言うのかわからず、緊張で心臓がドクンと鳴った。





「前にも言ったけど―空生は、空っぽなんだよ。だから、そんな空生と関係を始めるには、マイナスからのスタートなんだ。」




その言葉には聞き覚えがあった。


インパクトが強かったから、記憶に残っている。




「…でも、マイナスでも良かったんだよ。」




そこまで言うと、タカは私から目を逸らし、背後へと移した。



同時に、車が停止した。




「着きましたよ」





遠慮がちに落とされたタクシーの運転手の声と、パカと開いたドア。




背後から冷たい空気が入り込み、中との寒暖の差の激しさの為か、さっきまでぐちゃぐちゃだった頭の中が、やけに静かになる。



―一体タカは何を言おうとしてるんだろう。



このまま降りていいものかどうか、そのままの姿勢で逡巡していると、タカが右手で外を示した。




「え、っと…あ、、じゃぁ…」



かなり不完全燃焼だけれど、タカが降りるようにと指示しているのだから仕方ない。