詐欺師の恋

何故か、藤代くんがはっと息を呑んだのが伝わった。




「っていうかさ…ちょうど良かった。俺、カノンちゃんにちょっと訊きたいことあったんだわ、付き合ってよ。」





お互い連れが居るというのに、配慮もへったくれもないタカ。





「そんなわけだから、ようちゃんまきちゃん、ごめんね!さっきの話なし!」




ようちゃんまきちゃんから、ふざけんな!って声が聞こえた気がするけど、タカは気にした風もなく。





両手をポケットに突っ込み、ちらりと私の横にいる藤代くんに目をやった。





「つーわけで、カノンちゃんは借りてくね?」




藤代くんの返事を待たずに、タカは私のコートをぐいっと引っ張る。







「うあ、ちょ、ちょっと!!!」







激しく動揺する私を余所に、タカが有無を言わせない力で引っ張っていく。







「ふ、藤代くんっ…」






ひきずられているかのような体勢の中、なんとか、藤代くんの名前を呼ぶけど。




どうしてか、藤代くんはそこから動くことも、声を発することもせず。




勿論。





追いかけても、きてくれなかった。