詐欺師の恋

ぷつん、と。


自分を押し留めて居たものが、切れてしまったのは。



代行が来るまで、酔いを少しでも醒まそうと、店から出て外を歩いてる時だった。







「-雪だ…」




季節外れの雪が、ちらちらと降り始めて。


それに気付いた藤代くんが呟いた。





「だからか、やけに冷えるな、とは思ってたんだ。」




隣を歩いていた彼は、肩を縮ませて、コートのポケットに手を突っ込んだ。




「やっぱり、店に入って待ってよう?」




「………」



私はそれに答えず、ただ、落ちてくる雪を見上げる。





途端に。





「……櫻田?」




込み上げてきたというよりは。



抑えてたものが、外れてしまったという感じだった。



手も、足も、頬も、冷たいのに、目からだけは、熱いものが滑り落ちていく。







―雪は、駄目。



雪は、もう、降っちゃ、駄目。






雪は、あの人との思い出が、多過ぎる。



思い出そうとしなくても、想っているのに。



それが、溢れ出して止められなくなってしまう。