私の心の中の葛藤を知ってか知らずか、車内で藤代くんは、今抱えている仕事の進行状況など、他愛もない話を振ってきた。
まるで、気にするな、とでも言っているように。
それでも自己嫌悪がなくなるわけもなく。
鉛を飲み込んだような私を、藤代くんが連れて行ってくれたのは、ビオワイン専門店。
モダンな白い壁が、枠のように店を囲み、はめ込まれたガラスから店内が見える。道路側に面する場所には棚があり、ワインの瓶が沢山並べられていた。
白熱灯の光で照らされたお洒落な店内は、決して広くはないが、カウンターとテーブルがあり、客で賑わっていた。
雰囲気は抜群に良かった。
「最近できたばかりなんだけど、中々美味いよ、ここ。」
近くのコインパーキングに停めた車から降りて、店の目の前まで歩きながら、藤代くんが教えてくれる。
「でも、ワインのお店でしょ、藤代くん飲めないの、悪いなぁ。」
「誰が飲まないって言ったよ、代行頼んで飲むよ。」
半歩先を行く藤代くんは、呆れたように私を一瞬だけ振り返って、店の戸を開けた。
―私の気遣い、返せ。
私は気付かれないように、その背中にあかんべをした。
「いらっしゃいませ、二名さまですねー。こちらどうぞ。」
店内に入ると、直ぐに店員がやって来て、案内を始める。


