それでも、そうしなかったのは。
外の空気が、冷たいから。
大好きな人が、居ないから。
憲子が、居ないから。
ひとりぼっちで、寂しかったから。
藤代くんの気持ちを知っているのに、こうしている自分が、最低だとは思う。
けど。
どうしたって、辛い。
辛いと、誰かに頼りたくなってしまう。
自分は、なんて弱いんだろうと思うけど。
藤代くんを利用しているみたいで、胸の内はもやもやとするけれど。
一人でいるのは、寂しい。
そう、考えていたことが。
藤代くんには、全部お見通しみたいで。
すごい恥ずかしくて、罪悪感が湧き上がってきて、俯いたままでいる私に。
「いつでも胸貸すって、前に言ったろ。」
藤代くんがぽつりと呟いた。
「え…」
顔を上げると、藤代くんは真っ直ぐ前を見て運転している。
「辛い時に、よっかかる相手でいい。俺のこと、利用してくれて構わないから。」
藤代くんは、私が元気がないことなんて、ずっと知っていて。
それは、去年の忘年会の時からで。
今の理由はまた違うけど、いつもそれに気付いてくれる。
―まずい。
思わず目頭が熱くなってしまった。


