「一人で帰ってるってことは、夜は空いてるってことでしょ?」



「そっ、そんなことはっ…」



「さ、飯食いに行こう」




図星をつかれて、ぎょっとする私に構う事無く、藤代くんはさっさと私の腕を掴んで車に向かう。




「いや、ちょ、ちょっと待って。」


「もう、時間切れ。待たない。」



軽く抵抗を見せるが、藤代くんは片手で助手席のドアを開けると、いとも簡単に私を座らせた。





「じ、時間切れって…」



「だって、ずっと駄目だったじゃん。随分待ったよ?俺。」




おろおろする私に、藤代くんはそう言うと、助手席のドアをパタンと閉めた。



直ぐに自分も運転席に乗り込んで、慣れた手付きで走らせる。




「ら、拉致っていうんだよ、これ。」



「じゃ、逃げれば?」



「!!」



藤代くんはチラリと私を見て、言い放つ。



全部、見透かされてるようでカッと顔が熱くなった。




―悪い、女だ、私は。



私は両手で握り締めたバッグを咄嗟に見つめながら、思う。




さっき、腕を掴まれた時に、振り払うことも、全力で抵抗することも、出来た。



藤代くんが、運転席に乗り込む間に、助手席のドアを開けて、出ようと思えば外に出れた。