詐欺師の恋

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ひゅぅ、と冷たい風が俺の髪も、コートの裾も、ひらひらと揺らす。



潮を含んだそれの中に、波の音が微かに聞こえた。






小高い山の上。




俺は冷たい四角い石の角にそっと手を着く。







「なぁ…、伝えなくて、いいよな?あいつなんかに教えなくていいよな?」





ぽつり、呟いた言葉も、風に消える。




「お前の時間は、止まっちゃったんだからさ。あいつだって本当は止まるべきなんだよ。あいつに幸せになる資格も、誰かを幸せにする資格もないだろ?」





―俺、間違ってないよな?




そう思うのに。




「間違ってないって…言ってくれよ…」





わかってる。



頭では、わかってる。



お前はもう、居ない。



もう、生きてない。



俺の声なんか、届いていない。



聞こえない。



そんなこと、知ってる。





自分自身で、答えを見つけるべきなのも、悟っている。


俺はもう二度と、大切な人をあいつに奪われない。


だから、今のまま、俺は進んでいけばいい、そう思うのに。







どうしてだろう。



確信が、持てないよ。