詐欺師の恋

老人は直ぐに気付き、腰を上げてこちらにゆっくりと向かってくる。



「あの人に、訊いてみるといいよ。でも期待しないで。個人情報は教えちゃいけないことになってるから。」




施設長はそれだけ言うと、俺に背を向け、ドッジボールをやっている輪に走っていった。



俺は小さく頭を下げてそれを見送ってから、のっしのっしと近づいてくる先ほどの老人を振り返る。




「私に…何か御用でしたか?」




老人は不思議そうな顔で、ドッジボールに参戦した施設長に目をやってから、俺の顔を見つめた。





「あ、あの、俺が、実はちょっと捜している人が居て―。それが、ここの施設長の息子だって聞いたので、会いにきたんですけど…そしたら…」




俺がそこまで言うと、急に老人の表情が明るくなった。




「空生のことかな?あの子、元気かい?こっちに戻ってきてるのかい?」




―アオ?



俺は聞き覚えのない名前に、内心戸惑った。




「…名前、はちょっとわかんないんですけど…」



「金色の髪だったかい?」




間髪容れずに老人は訊ねる。



「はい!そうです。」




どうやら、間違っては居ないようだった。

ほっとしたのも束の間。





「…私の、、、息子です。。」




老人は少し寂しげに、同時に少し嬉しそうに呟いた。