詐欺師の恋


詐欺師の、片棒…



その場に立ち尽くして、言葉を咀嚼するのにかなり時間がかかった。




「・・・」



やがて、今まで靄がかかっていた全ての不可解な出来事の意味を、理解する。





「美咲…」




咄嗟に美咲の携帯を何度も何度も鳴らすが、出ない。



苛立ちを覚えても、クラブに行くのには金がいる。


強行突破しても、つまみ出されるだろう。





そのまま俺は空になった財布を拾って、仕方なく帰途に着く。



寝ずに―どっちにしろ眠れる状態ではなかったが―美咲の帰りを待っていたが、結局朝になっても美咲が家に帰ってくることは無かった。



といっても、美咲はここ一週間程家に全く帰ってきていなかった。



―直ぐにでも止めさせないと。



時刻は朝の7時を過ぎた所だ。


再び俺は美咲の電話番号を鳴らす。



美咲の好きなバンドの曲が流れる。



なんていう題名だったかは忘れた。




そして。



≪お兄ちゃん…≫



「美咲!?」



慌てていたせいか、名前を呼ぶので精一杯だった。




≪あの人、、居なくなっちゃった…≫



鼻を啜るような音がして、美咲が泣いている事に気づく。