「ほんと、社会人の常識がなさすぎるのよ。ほら、そろそろ行かないと。」
憲子はそう言って、スタスタと歩き出す。
時計を確認し、私と藤代くんも憲子の後を追った。
「…なんか、あったの?」
コソ、と訊ねてくる藤代くんに私は苦笑い。
同期トリオが同じ課に居るのはちょっと珍しい。
と、言っても藤代くんは他の課から異動してきたので、トリオで居るのは実際の所、まだ一年経っていないのだけど。
さらに言うなら、私と憲子は短大出。
藤代くんは四年制を出ているので、年は二個上になる。
だから、憲子に「藤代!」と呼び捨てにされる謂(いわ)れはない気がする。
「…ま、こないだよりは元気あるみたいだな。」
曖昧に誤魔化そうとする私に気付いてる筈なのに、藤代くんは気にしたふうもなく、ほっとしたように呟いた。
「…心配してくれて、ありがとう。」
藤代くんは、掴み所のない人だけど、気配りもできるし、仕事が出来る。
有名大学でてるし、出世コース。
じゃあ、どうして今まで私のターゲットにならなかったか。
それにはそれなりの理由がある。


