信号待ちで立ち止まった所で俺はふと冷静になる。
―これが本人だとして、俺は一体何がしたいんだよ。
咄嗟に追いかけてきたのは良いが、まだ美咲に何かされたという確信はない。
ただの酔っ払いの絡みになってしまいかねない。
「ヒロ」
そこに、女がやけに甘い声で、横に居る男を呼んだ。
男はそれに笑顔で応じ、女と組んだ手に力を入れる。
―ヒロぉ?
その背後で、俺は益々訳がわからなくなる。
美咲や赤頭から聞いた話じゃ、確かレイって名前だった筈だ。
―じゃ、やっぱり人違いか?
クラブでのことがあってから、美咲の話をぐるぐる考えていた自覚はある。
それが、錯覚させたのか?
いちゃもんつけた挙句、人違いでした、では済まされない。
結局信号が青になっても、俺はその場を動かずに、首を捻りながら、二人の後ろ姿を見つめていた。
確かに、似ているのに、と思いながら。


