詐欺師の恋


あの時は。



その言葉の意味がよくわからなかった。



恋なんて。




別に、生きていくために必要なもんじゃないし。




一種の熱病みたいなもんで。




高い熱に浮かされた後は、すぅっと引いていく。




時間が経てば、忘れ、なくなって。






恋なんて。



誰かに頼りたいから、一人じゃ寂しいからするもんで。



別に誰か一人に絞らなくても。



傍にいて、心地良い人が見つかればそれでいいわけで。



絶対にこの人じゃなきゃ駄目なんてことはないんだから。



盲目的になるなんてことも、一時的で。




後戻りできないほど、溺れるなんて。




そんなことあるわけないだろ、と。





赤い髪の男のことを、どこか馬鹿にして見ていた。



後になって、どれ程真実だったか、痛感することになったのだけれど。



でも、この時に、それをわかっていたとしても。



やっぱり未来は変わらなかったんだと、思う。