詐欺師の恋

俺の力が緩んだのを了承したととったのか、美咲は直ぐに顔をステージに向けた。



そうして、今はもう青い光に変わった、照明の下のDJをじっと見つめる。




熱の籠もった視線で。




妹がこんな風に、切ない顔をしているのを見るのは、初めてだった。



―突然兄が来ても、自分にまずい事が起きても、それでも、あいつが優先なのか。



そんなに、好きなのか。



それとも、憧れに過ぎないのか。



誰にも気付かれないように、小さく溜め息を吐き、腕組みをしてその場に突っ立っていると。




「美咲ちゃん、随分入り浸り、だよー」





さっき美咲の肩を抱いた、髪の赤い男が、カウンターに頬杖を付き、笑ってこっちを見ていた。




「・・・・」




「零狙い、みたいだけど…不毛だし。」




「・・・・」





「あんだけ真っ直ぐだと…零は相手にしないから、ね。けど…」




そこまで言うと、男は美咲の背中に目を向ける。




「ちょっと迎えに来るの、遅すぎたかもよ?」




「―え?」




それまで無視を決め込んできたにも拘(かかわ)らず、俺は思わず口を開いていた。




男は相変わらずにやりと笑んで、ゆっくり俺を見た。





「引き返すことができないくらい、溺れてる。」