情けない事に、熱を出して倒れたあの日の記憶はほとんど残っていない。
藤代くんが送ってくれたのは薄らと覚えているのだが、それすらもおぼろげだ。
けれど、もしかしたらあの日、中堀さんが来ていたのかもしれないと考えると居ても経っても居られず、事実を確認したかった。
確認したところで、どうしようもないのはわかっているのだけれど。
「………誰か、、来る予定だったの?」
藤代くんは真っ直ぐに私を見つめたまま、訊き返す。
「え、と…ちょっと、、、、」
「こなかったよ、誰も、こなかった。」
どうやって答えようか考えあぐねていると、藤代くんが被さるようにして、きっぱりと言い切った。
「あ、、そっか、そうだよね、、はは…来てたら言うよね。」
中堀さんが来ていない可能性の方が高いのはわかっていたのに、すごくがっかりしている自分がいる。
冷静に考えれば、来客があったなら、藤代くんが私に言わないわけがない。
こんな自分が馬鹿みたいで、罰が悪く、藤代くんからパッと目を逸らした。
「ごめんね、変なこと訊いて。」
「いや・・・」
藤代くんはそう言って首を振ると、缶に口をつけた。


