詐欺師の恋


握り締めた手は、不本意な豆乳ラテから熱をもらっている。




「……決算、なんとか終わって良かったな。」




大きな窓ガラスから見える夜景に目を向けながら、藤代くんがぼそっと呟く。




「……うん」




先月は殺人的に忙しかったが、この所は大分落ち着いてきていた。それでも、今日は残業だ。



自分のメンタルが落ち着いていないせいもあって、仕事が進まないからだけど。




「体調は、どうなの。」




「うん、もう、大丈夫。。。あの…」





訊ねようと思っていた方向へ、話の流れが向かっていったことに、思わず缶を握る手に力が籠もった。




「何?」



藤代くんは夜景から目を外し、言葉に詰まる私を見つめる。




「あの、日…」




私は豆乳ラテの缶を視界に入れて、一呼吸する。



「あの日って?」




そして、顔を上げて、首を傾げる藤代くんと視線を交わした。




「私が、熱を出して倒れた日…」





藤代くんの眼鏡の奥の瞳が、揺れる。




「私の、アパートに、、誰か、来なかった?」