詐欺師の恋

急に影が差した憲子の表情に、いつだったか彼女が―





『私達だって、何もない訳じゃないんだからね』





と言ったことを思い出した。





「裕ちゃんとはさ、大学からの付き合いじゃん。結構長いのに、、全然将来のこととか、考えてくれてなくて…」




視線はジョッキを捕らえたままで、憲子はぽつぽつ話し出す。




「やっぱり、私だって女だし?これから先のこととか考える訳。ましてや新しい恋なんて更々考えられないくらい、裕ちゃんとは長く過ごしてきたから。だけど、先が見えないと、焦る。かと言って、裕ちゃんと別れて、これから恋愛するとか、考えても…好きだって言ったり、駆け引きとかしたり、自分のこと知ってもらったり、、、そんなことしてる間に周りはどんどん結婚していっちゃうし…」





言いながら、憲子はジョッキを握る手に、力を込める。





「けど…裕ちゃんもそうかって言ったら、当たり前だけど全然考えてないんだよね、そんなこと。同じじゃないんだよね。なんか…がっかりっていうか…そんなんで、ちょっと花音にも八つ当たった、ごめんね。」





憲子は再び大きく溜め息を吐いた。





「…なんか、、こっちこそ、、、ごめん。私ばっかりいつも聞いてもらってて、全然気付いてあげられなくて…」





いつも大人で、しっかりしている憲子が、まさかそんな風に思っているなんて知らず、深く反省する。




そんなんで、友達なんて言えない。




「・・・・・・花音、、あんた、人の心配より、自分の心配しなさいよ。」