詐欺師の恋

「藤代のことはわかんないけど、少なくとも遊びで手をだすような奴じゃないよ。一応出世コースの人間だし、将来的に見ても有望株じゃん。今すぐじゃなくても、藤代と付き合うっていうのも選択肢の一つとして考えたら?今までどれも普通の恋愛じゃなかったからさ、普通の恋愛しなよ。」




憲子がやけに饒舌になって、ビールを仰いだ。




「できるわけ、ないじゃん。」




そう言って、私はまた目を逸らす。



視線を向けた先、冷えた焼き鳥が視界に入るとそれだけで、なんだか寒く感じた。




「だって、初めて好きになったんだもん、そんな簡単に…」




ガン!!!



そこまで言いかけた所で、憲子がジョッキを勢い良く机に叩き付けた。





「いい加減にしてくれる?!そうやっていつまでもうじうじうじうじ考えて何になんのさ?!もううちら25だよ?!今年26になるんだよ!?四捨五入して30だよ!?そんなこと言ってる暇ないでしょう!???」






突然物凄い剣幕で捲くし立てる憲子を、私は姿勢を固まらせて見つめた。




周囲がシンとして、視線が気になるが、今はそんなこと考えてる場合じゃない。




「の、憲子…?」





名前を呼ぶと、直ぐにはっとした憲子が今度は俯いた。





「…ごめん、、少し、、八つ当たった。。。」





「-え?」





今度は呟くように言われて、思わず訊き返す。






「…ずっと、、言い出せなかったんだけど…実はさ、裕ちゃんと、、今あんまり上手くいってないんだ…」