詐欺師の恋


ひとしきり泣いた後、化粧室で暫く目を冷やし、バレないようにメイクを厚くした。




誰も居ない洗面所で、ぱんぱんと頬を叩いて渇を入れる。





「よし!」




憲子は先にオフィスに戻っていて、私が帰ってきたのを見ると、優しく頷いた。






―あと何回。




マウスをクリックしながら、考える。






あの人を思い出してしまうのは仕方ない。



だけど、思い出す度に泣いてしまうのは、あと何回だろう。







「櫻田、今日飯食いに行かない?」





突然、名前を呼ばれてはっとする。



見ると藤代くんが傍に立っていた。






「あ、えっと…」




「残念でしたー!今日は花音は私と行くのー!」





隣で聞いていた憲子がすぐさま反応する。




「…別に篠田も一緒でいいよ?」



「え!!!」



「ごちそうするけど?」



「あ…いや、駄目!今回は駄目!また今度!」




藤代くんの誘惑に、憲子がなんとか打ち勝つ。





「ま、いいけど。また誘うね?」




憲子には聞こえない位の声で、こそっと藤代くんは私に耳打ちして、オフィスを出て行った。