詐欺師の恋


「…く」





温かい感触は、寒気ですぐに冷たく頬を這う。










本当は。




あんたが欲しいよ。




あんたに傍に居て欲しいよ。




笑ってて欲しいよ。






不器用な所も、すぐに怒る所も、顔を真っ赤にさせて照れる所も。





お節介な癖にすぐに泣く所も。






全部、知ってる。





全部、思い出せる。







外の、雨音がボリュームを上げた。



彼女の甘い香りも、直ぐに流してしまうだろう。






俺の記憶も、洗い流せたら良いのに。






最後に見た彼女の泣き顔が、頭に焼き付いて離れない。





あんなに聴きたかった声は、震えて、弱くて。





自分が、彼女を沢山傷つけてしまった事実が、こんなにも苦しい。