詐欺師の恋

そして―。





「零、零ってば―」






寒さが厳しさを増す2月―。





「出番、だよー」





屋上で手すりに寄っかかりながら、紫煙をくゆらせていると、メリッサが呼びにやってきた。




「ん、今行く」




ちらりとメリッサを見て頷く。




「あと、五分もないからね!ほんっと、よくこんな所に居られるわね、うー寒っ!!」






ぴしゃりと言い放ち、彼女は直ぐに向きを変えて屋上を出て行こうとするが。





「…ねぇ。」





出口の前で立ち止まると、背を向けたまま、呟いた。






「花音、、どうした?」





久しぶりに聞いた名前に、痛みがじわりと胸に広がる。




暫くの沈黙の後、メリッサは直ぐに歩き出す。




「ごめんっ、なんでもない!」




ひらひらと手を振って、まんまと苦味だけを残して立ち去った。





「後味悪…」




煙草が苦く感じる。



感情的な問題だということは理解していた。




だけど、気付かないフリをした。





そして、また、仕事に没頭する。





眠らない夜。




眠れない朝。





何にもない、人間だから、空っぽにならないように。



だけど、満杯にもならないように。




中途半端に生きるしか、ないよな。