詐欺師の恋

あの時と同じように。





数メートル先まで行った所で、俺は振り返る。






そしてやっぱりあの日と同じように。





切ない顔をして、俺を見つめる崇の姿があった。






だから。





「大丈夫だよ」





同じ言葉を言って、安心させるように俺は笑う。





「諦めんのは、慣れてる」






確かに、笑った。



そうして。


何か言いたげな崇から逃げるように背を向けて、階段を下りた。









「…そんな顔して言ったって…説得力ねぇよ。」








歩道橋の上、一人残された崇が、呟いた言葉なんて、聞こえる筈もなく。





冷たい風が、自分の心の中にも舞い戻ってきて。




その痛さに耐えられず、運転席に座るとハンドルに突っ伏した。





「くそ…」






ずっと前から、諦める気はあった。




なのに、思ったよりも、痛い。





「柄じゃないことは、するもんじゃ、ねーな…」





車の助手席に置きっ放しの紙袋を見て、数時間前の自分が馬鹿みたいに思える。




ただの。


長い、夢。




ずっと目を覚まさないでいれれば良かったのにと思うほどに。




ごく稀に、見ることのできる、心地よい夢。





もしかしたら、現実なんじゃないかと、思うようになるほど。






その夢に、囚われていた自分。










滑稽過ぎて、笑えもしない。