詐欺師の恋

もしかしたら、このままでも。



ずっと、気付くことがなくても。





いいんじゃないかって。




淡い期待が募っていた。




空に放してやらなきゃいけない鳥を。



あともう少し。



もう少しだけ、傍に。




置いておきたい。





そんな風にして、先延ばしにして。





この街に長いこと身を置くことが、懸命ではないことを理解していたのに。









「声が―聴きたかったな…」








触れそうで、触れない距離で。




停止していた自分の手を、ゆっくりと、離した。






鍵は閉めて。



ドアポストに入れて。











カチャン、という音に彼女の眠りが妨げられないようにと、願いながら。