詐欺師の恋


―あんたは違う。





頭の中を、ぐるぐると、言葉が飛び交っている。




静かな部屋。



いつか来た時のことを、思い出す。



突然だから。



いつも、俺が来ると、彼女は困った顔をして、慌てふためく。





顔を、真っ赤にして。






「…ん」





ベットに横たわる花音は、頬を火照らせて、うっすらと汗をかいていた。




赤い花のような唇は、苦しそうな息を漏らしている。






その脇に、屈みこんで、思わず触れそうになった。






―彼女を守る資格はあんたにはない。






「っ…」






こんなに。




こんなにすぐ近くに居るのに。




やっと、会えたのに。





その、額に。



頬に。



唇に。




触れることが、躊躇われる。


気付いて、いなかったわけじゃない。




いずれ、見つめなければいけなかったことだった。



ただ、もう少しだけ、と目を逸らしていた。