詐欺師の恋

「俺なら、櫻田を幸せにできる。直ぐ傍に居て、守る事だって出来る。でもあんたは違う。」




ゆっくりと階段に足を掛け、吐き捨てるように呟いた。




「あんたと居たら、櫻田は5年前の女みたいに駄目になる。もしあんたが本気だったとしても―櫻田にとってあんたと居ることは、いつか爆発する時限爆弾と一緒にいるようなもんだ。いずれ、追い込むことになる。幸せになんかできるわけがない。それだけのことをあんたはしてきたんだ。」





夜の空気が、一段と冷たく感じる。





「彼女を守る資格はあんたにはない。」





カン、カン、カン。




「櫻田のことを本気で想ってるなら、彼女から手をひいて下さい。」




階段を下りる音が、やけに空っぽに聞こえる。




人の気配が、遠退いても。




暫くその場を動くことが出来なかった。





月明かりが、雲に覆われて。




漸く花音の家のドアノブに静かに手を掛けた。





鍵の閉まっていない所を見れば。




さっきの男が、今までこの中に居たのだと再確認する。