詐欺師の恋

どこかで。



携帯が、鳴ってる。



でも、固まって動けない。



抱き締められすぎて、動けない。





今。



藤代くんは、何て、言ったの?





中堀さんとは違う言葉で。



中堀さんとは違う腕で。



涙でぐちゃぐちゃの私を押し付けた胸は、中堀さんの香りとは違うけど、甘い香りが、する。



夏の初めに咲く、クチナシみたいに甘い、香り。




それから。




いつも落ち着いている中堀さんとは違う、割れてしまいそうな、胸の音。




真冬の風すら、わからないくらいに熱を帯びて。





「―うそ、でしょう?」





やがて、くぐもった声が、藤代くんの身体に響く。





「―え?」





「ずっと…す、好きだ、なんて、、嘘、でしょう?」





「…どうして、そう思うの?」





藤代くんは、同期入社だけれど、配属の課が違ったせいもあって、すれ違う際に挨拶する程度の存在で。



噂が流れ出すようになってからは、それすらなくなった。


完全に違う種類の人間で、嫌われていると自覚していた。



今年度から同じ課にはなったけど、自分のことを気に掛けてくれると感じるようになったのは、去年の忘年会の時からだ。